がんとの日々④

手術のための入院は、通常前日ですが私の場合は、もう一度大腸内視鏡検査が必要とのことで数日前の入院になりました。入院は長男を出産して以来のことでした。不安がありながらも専門病院の看護がどのようなものか期待もしていました。

入院病棟は7階でとても景色が良く、特に夜景は美しく東京タワーやスカイツリーを見物しに同室の方々と出かけたものでした。がん専門病院なので入院されている方は、部位は違っても同じ病気ですから同志というような存在でした。

初めて大腸内視鏡検査から1か月後の2017年4月18日午後に、腹腔鏡下右半結腸切除術を受けました。手術室までは看護師さんと歩いて向かい、手術室へと入りベットに横になります。そのベットはふかふかで温かく緊張を和らげてくれました。何より手術室の看護師さんは、とても優しく麻酔が導入されるまで手を握ってくれました。手術は6時間程掛かったようですが、体感的には1秒ほどでした。目を閉じた次の瞬間には手術が終わっていました。何とも重苦しい腹部の痛みと吐き気を感じながら病室へと戻りました。

病室に戻ると、看護師さんたちが手早くバイタルサインを計測したり、酸素マスク、サチュレーションモニターは指に、足には静脈血栓を防ぐための加圧器具、血圧系、心電図モニターなどいろいろな物品を体に付けていきます。一晩この状態なのでとても拘束感を感じました。

この一晩はまさに地獄の苦しみでした。痛みより吐き気が強く嘔吐を繰り返しました。腹腔鏡手術とはいえ傷が数か所あるので、嘔吐のために腹圧がかかると激痛でした。その夜は体に付いた様々なラインの拘束感と嘔気、嘔吐、看護師さんがカートを押す音などのため一睡もできず、朝になって点滴以外のラインがはずされても全く楽にはなりませんでした。

術後1日目には、通常歩行をすることになります。しかし私は一睡もできないまま朝を迎え少しのベットアップでも眩暈を感じて起き上がることも出来ませんでした。寝たままだと腸が動かず腸閉塞を起こすと、何度も看護師が起床するようにと言いますが起きられないのですから仕方がない。その日は歩くどころかベットの上で起き上がることも出来ませんでした。

吐き気が収まったことだけ救いの長い1日となりました。

術後2日目、遅ればせなら廊下を数メートルでしたが、術後初めての歩行が出来ました。傷の痛みはありましたがジュースも配膳され、とても美味しく頂きました。術後3日には、洗面室まで歩行し看護師さんに髪を洗っていただいたり、尿道カテーテルも抜きトイレにも行けるようにもなりました。まさに日にち薬、1日1日と回復していきました。毎日看護師さんに腸閉塞の予防のため歩くようにと言われ、病院内を歩くことが日課になりましたがどれ程歩いたらいいのか?知り合いの理学療法士さんに伺うと、気持ちを楽に好きな音楽でも聴きながら自分のペースで歩けばいいとアドバイスを受けました。発病~入院~手術と慌ただしく気持ちに余裕もなく音楽を聴くことなど忘れていました。

病気が分かったころ、好きなアーティストさんのライブがありました。絶望期の私は出かけることができなかったのですが、友人がその日に発売されたCDを送ってくれました。携帯に取り込んでいたのでそのアルバムを聴きながら歩行するようになりました。大好きなアーティストさんの優しい歌声と共に、広い病院内を1日に何度も歩きました。術後1日目は一般の患者さんと同じ経過をたどれませんでしたが立派に回復していきました。人には個人差がるということです。手術を受けて回復していく経過の中で一番重要だったのは食事です。

医師は手術が終われば後は経過を見るだけです。手術で空っぽになった体に食事からの栄養が染みわたるように感じました。特にこの病院の食事は美味しくて毎食とても楽しみでした。あまりの美味しさに毎日食札の裏にお礼を書いていたほどです。食事の重要性を感じて退院後はしっかりと自分で調理しようという意欲にもつながりました。そして術後9日目に無事退院となりました。

投稿者: kimie

2017年3月に大腸がん発症しました。 手術を受けて半年後に再発、転移〜抗がん剤治療が始まり、 5年が経ちました。発症から現在に至る経過から少しずつ振り返ってみたいと思います。

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